孫悟空は、中国で16世紀に大成した伝奇小説【西遊記】の中の登場人物で、猿と人間と神様を併せ持つ特別な役柄です。【西遊記】は、神・仙人・妖怪などが登場するお話で、三国志・紅楼夢・水滸伝と並ぶ中国4大古典作品の一つとして世界でも有名な物語です。
日本では、三蔵法師の弟子となって、猪八戒・沙悟浄らと一緒に天竺までお経を取りにゆくお話が有名ですが、京劇では、三蔵法師の弟子になる前の傍若無人な孫悟空が描かれる作品が多いようです。
その【西遊記】から京劇では以下のような演目があります。
その他にも、様々な場面を描いた作品がありますが、どの作品も孫悟空が主軸になり、自らを「斉天大聖(神様の称号)」と名乗りながらも、人間味あふれる行動と猿のコミカルな動きで、舞台を縦横無尽に駆け回ります。激しい立ち回りの中にも喜劇的な孫悟空の演舞が、この作品の大きな魅力となり、今なお色あせずに人々に親しまれている要因となっています。
CSC企画で2005年に上演した「京劇エンターテイメント 悟空(主催:読売新聞東京本社・東京労音)」は【三打白骨精】を題材にしました。
孫悟空は、外見は猿の動作ですが、内面は人間と神様の精神を両方持つ、非常に難しい役柄です。
この役柄を習得するには、まず「猿」の決まった基本型から始まりますが、他の京劇の役柄には無い型なので、京劇学校などでも低学年のうちは教えられることがありません。なぜなら、その癖がついてしまうと他の役柄に悪い影響が出てしまうことがあるからです。
演じた京劇俳優:いくつかの流派の中で孫悟空も様々な形で演じられますが、一番有名な役者は国劇宗師である「楊小楼」です。仙気あふれる気品の高い演技と動きは後世の模範となりました。かつて周恩来総理は、楊派の孫悟空に高い評価を与え「楊派の悟空は動物園の猿ではなく、斉天大聖である」と張紹成の恩師の前で語りました。
※張紹成は、楊派の第二代の名優京劇の重鎮王金璐氏の直伝の弟子です
舞台写真:百井謙子